自己破産の注意点

破産手続きをする場合の注意点として

  1. 住宅の取り扱い(住宅はどうなるのか)
  2. 保証人への影響
  3. 非免責債権

について、ご説明します。


住宅の取扱(住宅はどうなるのか)

「自宅だけは守りたい。手放したくない」とお考えの方は多いと思います。

この場合、自己破産を選択することはできません。

任意整理もしくは、個人再生を検討するのが賢明でしょう。

 

 

それでも熟慮を重ねた結果、自己破産を利用せざるを得ない場合、自宅はどうなのでしょうか?

 

同時廃止事件となった場合、裁判所は借金を負った人の財産の配当手続きをしないと決めたわけですので、その不動産は抵当権者(住宅ローンの銀行や保証会社)の抵当権が実行されるか、抵当権者の協力をもらって、任意売却によって住宅を処分することになります。

 

ここで、不動産を持っているのに、同時廃止事件となるのか疑問に思った方がいらっしゃると思います。

この点、住宅には抵当権などの担保が登記されていますが、その担保の被担保債権残高が、住宅の時価を相当程度上回っているとき(「オーバーローンといいます」)、住宅には財産価値がないと認められるのです。

 

 

したがって、他に価値のある財産がなく、その他破産管財人を選任する必要性が認められないときは、同時廃止事件として処理されることがあるのです。

 

同時廃止事件となった場合は、裁判所は財産の処分手続きに関与しませんので、あとは担保権者が担保権の実行という権利を行使してくるわけです。

ただ、担保権の実行というのは、競売という手続きの性格上、住宅の処分価格が低く抑えられる傾向があります。

そうすると、担保権者に入ってくるお金が少なくなってしまうという面があります。

 

だから、担保権実行という手続きよりも、任意売却がより好まれる傾向にあります。簡単に任意売却をご説明しますと、担保権の実行を待ってもらう間、住宅の所有者(通常はローン契約者)は、住宅を買ってくれる買主を探し、担保権者の同意を得ながらなるべく高値で買主に売却します。

 

売却代金は、担保権者の優先順位に基づき、配当されることになります。

こうすると、より多くの債権者が満足を得ることができ、かつ残債務額を低く抑えられるというメリットがあります。

 

 


保証人への影響

お金を借りた人が破産(免責決定)できたとき、もし保証人がいれば、どうなるのでしょう?保証人の支払い義務は免除されるでしょうか?

 

残念ながら、お金を借りた人が破産して、支払義務を免れたとしても、その効果は保証人には及びません。

すなわち、保証人は、引き続きお金を借りた人に代わって、支払う義務が存在するのです。

 

従いまして、自分が破産を考えている場合で、保証人となられている方がいらっしゃれば、その方のことも検討する必要があるわけです。

 

自分が自己破産をせざるを得ない場合、保証人の方に迷惑がかかることを事前に報告しておいたほうが賢明です。

場合によっては、その保証人の債務整理を検討しなければならないときもあります。

 

 


非免責債権

自己破産の最終的な解決は、支払い義務の免除です。(免責決定といいます)

しかし、いくら破産しても支払い義務を免れることのできない債務があります。これを非免責債権と呼びます。

 

具体的には以下の債権です。

 

  1. 租税等の請求権(所得税、住民税等の税金関係です)
  2. 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
  3. 破産者が故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
  4. 夫婦間の協力及び扶助の義務、婚姻から生じる費用の分担義務、子の監護の義務、親族間の扶養義務、以上に掲げた義務に類する義務であって契約に基づくもの
  5. 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
  6. 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権
  7. 罰金等の請求権

 

何点か、かいつまんでご説明しますと、

 

まず2の「悪意」とは単なる故意ではなく、他人を害する積極的な意欲(害意といいます)を意味します。判例としては、月収額から生活費等を控除するとすでに負担している借入金債務を返済できない状況にあったのに、それを隠して発行を受けたクレジットカードを利用して破産申し立て前に商品等を購入し、その後免責決定を受けた事件で、この「悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」が認められたものがあります。

 

3の具体例として、悪質な飲酒運転によって人身事故を引き落とした場合が挙げられます。危険運転によって人命にかかわるような事故を起こしておきながら、その支払義務までも免除させるというのは国民感情の面からみても、妥当ではないと容易にお分かりいただけると思います。

 

4の具体例として未成年の子供の養育費、5の具体例として労働者の給与債権が挙げられます。

 

6は実務上、注意しなければならないものです。破産者が知っているにもかかわらず債権者名簿に載せられなかった債権者は、免責に対する意見を申述する機会を与えられず、免責に対する防御の機会が完全に奪われてしまうため、非免責債権となります。

従って、司法書士や弁護士に借入先を知っているにもかかわらず、きちんと伝えていなくて債権者から漏れてしまった場合は、その債権は支払い義務が残ったままとなります。