同 時 廃 止

自己破産は、簡単に説明すると、破産手続と免責手続の2つに分けることができます。まず破産手続とは、破産者の財産を回収して、債権者に配当することを言います。免責手続とは、破産者の借金の支払い義務を免除できるかどうか、審査する手続きを言います。

 

破産手続きは、裁判所から任命された破産管財人が行います。

破産手続における破産管財人は、破産者の財産を責任もって回収し、配当することになります。

 

当然、破産者に一定の財産が存在するから、破産管財人が任命されるのです。

それでは、破産者に財産がない場合、どうなるでしょう。

 

配当に回すだけの財産がないことが明白であれば、わざわざ破産管財人を選任してまで、破産手続きを進める必要はありません。

 

そこで、配当に回すことのできる財産がない場合、破産手続を開始すると決めるたけど、すぐに破産手続をしないと決めることになります。

 

このように、破産手続開始決定と、破産手続をしない(廃止する)決定が同時になされることがあります。

これを、同時廃止(事件)といいます。

 

一般消費者の方が、同時廃止事件で処理されることが多い大きな理由は、配当に回すことのできる財産がないという点です。

 

 

管 財 事 件

それでは、管財事件となった場合における破産管財人が行う破産手続は、どういう流れでしょうか。

  1. 破産手続開始決定と破産管財人の選任
  2. 財産を破産管財人が回収、換価
  3. 債権確定
  4. 破産債権者に公平に分配(配当)
  5. 破産手続終了

管財事件といっても、少額な財産・少数の債権者の事件もあれば、多額な財産・多数の債権者の事件があります。

ここでは、一般消費者(個人事業主含む)の方の管財事件という面から、比較的少額な財産・少数の債権者の事件を中心に説明いたします。

 

(1)破産管財人の選任 

大阪地裁では、申し立てられた事件を管財事件として処理することに決まった場合、破産管財人を選任します。

 

選任されましたら、申立人は通常、破産管財人の事務所に出向き、質問を受けることになります。管財人の手元には事前に破産申立て書類の一式が届けられていますので、その記載内容を中心に確認されます。

 

どのようなことを聞かれるかは、事件ごとによって異なりますので、一概には言えませんが、家計状況の確認、隠れた財産の有無、浪費等の免責不許可事由の内容、免責上の問題点、自由財産の拡張等は打ち合わせの度に、話が出されます。

 

(2)財産の回収や換価

申立て時に回収可能な財産は、管財人は回収に努めます。場合によっては、回収相手に対して裁判手続きをとります。また、申立て時にある財産でお金に変えることのできるもの(自動車、貴金属、株式等)はお金に換えたりします。

 

(3)債権確定と(4)配当

ある程度、申立時に破産の対象となる債権の額は把握されていますが、それをより正確に算定します。これは、配当に回す場合、金額が確定しないと、それぞれの債権者に配当する金額が決まらないからです。

 

(5)破産手続終了

配当が無事終了すると、破産手続きは終了し、免責手続きとなります。

 

 

同時廃止と比べて

一般消費者(小規模な個人事業主含む)の方の破産申立が同時廃止として処理されるのと、管財事件として処理される場合で何が大きく変わるでしょうか。

下記の4つの点を見ていきます。

  1. 予納金
  2. 自由財産の拡張
  3. 郵便物の取り扱い
  4. 債権者集会への出席
  5. 自由財産の拡張

1.予納金

予納金とは、裁判所に収める費用(同時廃止の場合、10,584円)です。

これが管財事件となりますと、大阪地裁基準の場合、原則(最低)として205,000円ですが、事件の困難さによって、増額されます。

 

2.自由財産の拡張

自由財産とは、破産者が自由に使用・管理・処分等ができる財産を言います。破産法では、民事執行法に規定する額に2分の3を乗じた額の金銭(99万円)と、差押禁止財産(衣服、寝具、台所用品、畳、建具、1か月の食料や燃料等)が定められています(破産法34条3項)

 

しかし、一般的に上記に挙げた財産だけでは十分に生活することができないため、上記の財産に加えて、破産者が自由に使用等ができる財産を拡張しているわけです。

 

3.郵便物の取扱

裁判所は、破産管財人の職務遂行のため必要な場合、破産者宛ての郵便物を破産管財人に配達する旨を嘱託(依頼)することができることになっています。(破産法81条1項)

 

実務上では、破産管財事件の場合、郵便物は破産管財人に配達されます。

私が扱った破産管財事件でもすべて、この取り扱いがなされました。

 

目的は、主に債権債務・財産の調査です。

借金の漏れはないか、申立書に記載した財産以外に隠れた財産はないかなどを郵便物を通して、調査することになります。

 

4.債権者集会への出席

同時廃止事件では、債権者集会が開かれないのですが、管財事件では債権者集会が開かれます。債権者集会とは、破産者の債権者が破産手続の結果の報告を受けたり、質問できる機会です。

 

小規模な破産管財事件ではこの集会に債権者が出席することは稀です。

 

5.自由財産の拡張

これは、自由財産の拡張のページで詳しく説明していますので、そちらをご覧ください。

 

以上からお解り頂いたと思いますが、お金がなくて困って破産をしようとしているのに、管財事件となれば、手間・お金・時間がかかります。

なるべく、同時廃止事件で処理してもらえることが重要となってきます。

 

 

同時廃止と管財事件の振分基準

以上述べてきましたが、申し立てた事件が同時廃止となるか、管財事件となるかは、破産者(一般消費者)にとっては重要なことです。

そこで、この2つの手続の振分の基準(大阪地裁の場合)を説明します。

 

同時廃止の基準の概要

破産者が持っている財産を

・現金及び普通預金(以下、「現金等」と呼びます)

・その他の個別財産(以下、「個別財産」と呼びます)

にまず、分けて考えます。

現金等の取扱

破産者の所持する現金等の合計額が、50万円を超えない場合、同時廃止事件として処理されることができます。

個別財産の取扱

個別財産とは以下を指します。

  1. 普通預金以外の預貯金(定期預金等)
  2. 保険の解約返戻金
  3. 積立金等
  4. 敷金や保証金
  5. 貸付金・求償金等
  6. 退職金
  7. 不動産
  8. 自動車
  9. 自動車以外の動産(貴金属、着物、電気製品等)
  10. 1~9以外の財産(株式、会員権等)
  11. 近日中に取得することが見込まれる財産
  12. 過払い金

 

上記の1~12までの財産を個別にみたときの金額が、20万円以上となるものがない場合、同時廃止の決定を受けることができます。

 

 

管財事件への移行が必要な類型

基本的には、「現金等の取扱」と「個別財産の取扱」で説明した要件を満足すれば、(現金等が50万円を超えず、かつ各個別財産も20万円以上となるものがなければ)同時廃止の決定を受けることができますが、注意しなければならないことがあります。

 

上記の同時廃止の基準を満たす場合でも、

  • 破産者が個人事業者である(あった)・・・個人事業者型
  • 破産者の資産等を調査する必要がある・・・資産調査型
  • 破産者に偏頗行為や財産減少行為が確認される・・・否認対象行為型
  • 破産者が法人の代表者である(あった)・・・法人代表者型
  • 破産者に免責不許可事由があり、裁量免責するには破産管財人の指導監督が必要である・・・免責観察型

に該当する場合は、管財事件への移行が指示される場合があります。