平成27年の冬、たのうえようこ(仮名)さん(58歳)が、司法書士事務所にお電話をかけてこられました。
たのうえさんは、司法書士(以下「私」と書きます)に相談した当時、12社から総額650万円の借金がありました。
一生懸命、パートに出かけましたが、そのほとんどが貸金業者やクレジット会社への返済に回り、手元には残りませんでした。
「明日、返済しないといけないところがあるんですけど!お金がないんです。そこは、主人が保証人になっているんです!主人には内緒にしたいんです。お願いできますか」と、たのうえさんは、私に頼みました。
私「ご主人が保証人っていうことですが、ご主人と一緒にその業者のところに行ったのですか?」
たのうえさん「いえ、私が主人の名前を契約書に書きました」
私「ご主人に頼まれてですか?」
たのうえさん「いえ、私が勝手に書いたんです」
私は、保証人はとっていないなと直感しました。
私は、たのうえさんに委任契約事項を説明し、たのうえさんと契約を締結しました。
そして、私は、早速たのうえさんの目の前で、その貸金業者に電話し、たのうえさんと委任契約を締結したこと、その証として受任通知を出すこと、たのうえさんに対する請求や督促を差し控えることを要請し、受任通知送付のためにFAX番号を聞き出しました。
そして、私は「たのうえさんには、保証人はついているのですか」と確認をもとめると、貸金業者は「たのうえさんには、保証人はいらっしゃいません」と回答したのです。
私は、たのうえさんに保証人のことを説明したところ、たのうえさんは、安心したのか、涙ぐんでいました。
その後、たのうえさんの債権調査が終了し、9社への過払い金(約600万円)が回収できました。
他の3社は、借金が残りましたが、過払い金で一括で返済し、たのえさんには、多額の過払い金がてもとに残ったのです。
私に相談したときには、650万円もの借金があり、とても返すことができなかったのですが、きちんと再計算すると、とっくの昔に借金はなかったことがわかったのです。
たのうえさんは、本当に憔悴しきっていました。
夜も眠れないとこぼしていました。
ご主人に知れることをもっとも恐れていました。
そこで、安心してもらうために、貸金業者に電話して保証人のいないことを確認したのです。
事件が終了し、笑顔で「ありがとうございました」と言ってくれたことが、いまでも忘れられません。
たのうえさんのように、家族に内緒にされている方は、本当に多いです。
知られてしまった時の不安や恐怖心から、自分だけで何とか解決しようと思いすぎて、それがうまくいけばよいのですが、うまくいかないケースが非常に多いのです。
そして、どうしようもなくなり、相談に来られるのです。
たのうえさんの場合、再計算すると、過払いの状態がずっと前からなっており、長期にわたって支払う必要もない返済を強いた貸金業者に対する怒りを覚えた事件でした。
紹介例は、実際にあった事件をもとに作成していますが、登場人物の「たのうえたかこ(仮名)さん」は実在しません。
任意整理の例をお分かりいただけるように、事件の骨子をご紹介しました。